2024年に読んでよかった本たち
2024年は割と本が読めた気がしています。ざっくり記録を見てみると50冊ぐらいです。
普段は小説、エッセイを中心に購入して読んでいます。
仕事に必要な本であったり、ビジネス書は別カウントしているので除外します。
その中でも特によかった10冊を記録もかねてまとめておきます。
2025年もたくさん面白い本に出会えますように!
女ふたり、暮らしています。 キム・ハナ/ファン・ソヌ著(清水知佐子訳)
韓国でパートナーでもなく女性2人で暮らすハナさんとソヌさんのエッセイ。
このエッセイに家族以外の共同体のあり方が垣間見えて少し安堵した。女友達同士で同居したい!ってよく思うことがあるんですが、共同生活で出てくる問題って相手が恋人だろうと夫婦であろうと友人であろうと、あまり違わないよねって視点を新たに持ちましたね。
ご飯を作るのは大好きだけど、整理整頓や物を捨てることが苦手な様子が私そっくりで・・・わかるよ、わかると思いながら読み進めました。
途中で出てくる猫ちゃんの写真もかわいい。
いずれすべては海の中に サラ・ピンスカー著(市田泉訳)
SNSで話題になっていたSF短編集です。竹書房の書籍を購入するのは初めてでした。
"深淵をあとに歓喜して"と"風はさまよう"が特に好きで、移動時間などにあっという間に読みましたね。どの話も共通して、何か喪失を抱えながらも生きていく人が様々な世界線で書かれていて、文体から静かで厳かな空気が伝わってきて読後がすっきりしていたのもよかったです。
短編を書くことの多い作家さんのようですが、中編小説とかがあったら本を読みながらゆらゆら宇宙世界をたゆたうような感覚にどっと浸れるような気がして、他の作品も読みたいなと今後に期待しています。
spring 恩田陸著
めちゃくちゃ期待して読んだ作品です。恩田さんの蜜蜂と遠雷がすごく良かったから、バレエを題材にした本小説も良いだろうな〜と思って。
どうしても惹かれてしまう才能を持った人を、色々な人の視点で見ながらバレエとそれを取り巻く環境、芸術、人を覗きみる作品。ハルくんが現実にいたとして、自分は関われないような気がしながら読みました。良くも悪くも才能のある人は周りを感化させるし、それによって孤独になることもあると理解しているのですが、その様が丁寧に書かれていて、無理やりドラマチックにしていないところが本当に良かった。こんな才能のある人、生きているだけでドラマなので・・・。
恩田さんの小説は、読みながら頭の中で音楽が鳴り響く感じがして本当に好きです。
すべての、白いものたちの ハン・ガン著(斎藤真理子訳)
白いものにまつわるエッセイかと思って読んでみたら全く違った。詩のような、散文のような...でも読み終わるとこれは物語だったと感じる作品。とても綺麗な文体で、静かで、真っ白です。
ハン・ガンさんがノーベル文学賞を受賞される前にたまたま手に取っていた作品。
短いお話の中で一人の女性の人生と痛みを体験するような印象に残る作品でした。他の作品も読んでみたいですが、結構人の弱いところを真正面からとらえていらっしゃる文体だったので、こちらの気力がきちんとあるときに腰を据えて読みたいなと思っています。
月は無慈悲な夜の女王 ロバート・A・ハインライン著 (矢野徹訳)
こんなにも壮大な、AIの概念が取り入れられたお話が1960年代にあったなんて...!
間違いなく今年一の作品でした。古典SFを今読むと、先代の想像力と叡智に打ちのめされます。月世界から地球に対する革命と独立、その過程にはマイクという計算機...長いお話ですが、エンタメとして最上級でした。これをきっかけにハインライン作品を何作か読んでいます。幼年期の終わりもすごくよかった。
ロゴスと巻貝 小津夜景著
ゆっくり大切に少しずつ読んだエッセイです。著者の読書体験や幼少期にまつわるものが多く、詩や古典文学が多く引用されています。特に理系分野の本へも言及されており、その知識や見識の深さからにじむ心地よい文体が好きです。
自分の知らない世界と関わることの楽しさみたいなものを読書からもらうことって結構ある気がしていて、これまでなんとも思っていなかったシェイクスピアを原文で読んでみたくなるとか、教科書に載っていた漢詩をもう一度見直したくなるとか、こういう風にどんどん学んでいくと人生豊かになりそうだなと示唆を存分に感じました。
ショートケーキは背中から 平野紗季子著
読んでいるだけで胃もたれしそうなほど、圧倒的な食への愛情と熱量が詰まったエッセイ。フーディストってこういうことなのか。文体がとてもTwitterで(褒めています)親近感があるのに、食べ物への熱意がもう生まれながらにして違うと思わされました。
私も食い意地が張っている自負があるのですが、世の中上には上が本当にいる・・!となる本です。平野さんのポッドキャストもこの本をきっかけにちょこちょこ聞いています。食いしん坊が書く食べ物はおいしく映る。
わたしたちが光の速さで進めないなら キム・チョヨプ著 (カン・バンファ、ユン・ジヨン訳)
どこかで離れざるを得なかった人たちのかけがえのない時間について。静かで切なく、刹那的で美しいSF短編集。人との関わりや心情に焦点があたり、かつ技術の発展が小さな希望として描かれた作品が多かった。いわゆる途方もない世界観の中で人類の滅亡や興隆を描く古典SFとはちょっと違い、もっと人間の内面に迫る世界が詰まっていました。きれいで、理不尽で、残酷だけど人間として生きることの真髄が垣間見える気がします。
派遣者たち キム・チョヨプ著(カン・バンファ訳)
美しく残酷で、綺麗な描写でありながら全然綺麗事じゃない!異世界や理解を超えるものとの共存を模索する主人公たちに人間の強さと希望を見ました。人間ってとても弱くて強い。SF要素もありますが、どちらかといえば大衆小説に近いかも。同じ作者の方の”地球の果ての温室で”という作品も昨年読んでいて、SFらしからぬ穏やかな世界の中で人間の機微と分かり合えなさとそれを受容した上で生きる人の強さを感じて、この作家さん好きかも・・・!と思い最新作も読み切りました。久しぶりに出ている著作を全部読もうと思った作家さんです。同い年なのもびっくり。短編も長編もいいなと思える作家さんに出会えるのは稀なので、うれしい。
ギデオン 第九王家の騎士 上・下 タムシン・ミュア著(月岡 小穂訳)
ネクロマンサーが骨を操るのってなぜこんなにもかっこいいんだろう・・・。映像化してくれないかなあ。絶対はまる人いると思うんです。
王国のネクロマンサーとそこに仕える騎士が生まれ持った宿命を生きていく様が生々しくてあっという間に読みました。これはね、多分二次創作が捗るやつです。ハロウハークに報われて欲しい。業を背負った主人公も好きだし、賢い女性が大好きなので、このファンタジー作品はエンタメとしてドはまりしてしまいました。日本語訳で続編はまだ出ていませんが、原書はもうすでにあるみたいなので頑張って読むかもしれません。
2025年に向けて、すでに積読が家のいたるところに見えているので、まずは読みたかった作品たちを楽しく読んでいこうと思っています。その上でまた新しい作家さんの作品にトライできたらうれしいなと思っています。
あと洋書も久しぶりに1冊読み切りに挑戦したいと思っています。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。